坂東 秀調 Bando Shucho

「酔ざめお園」プレビュー公演から13年

かしも明治座で平成8年に行われた渡辺美佐子・坂東秀調の「酔ざめお園」プレビュー公演に出演された秀調さんにお話を聞こうと、小田孝治さんを案内人に、歌舞伎座さよなら公演[五月大歌舞伎]の初日の楽屋へおじゃましました。

案内人:小田孝治さん(歌舞伎評論家)

インタビュー:秦雅文(かしも通信編集長)

 

「酔ざめお園」プレビュー公演から13年

:秀調さんから見た、加子母の地歌舞伎の魅力ってどんなとこですか。

秀調:村の方々が座布団を持ったり、水筒を手にして楽しみに明治座へ向かう姿を見て、これが歌舞伎の原点だと思いました。加子母の地芝居は地芝居でかっちり残してもらいたい。 だから、僕が伺った時に、歌舞伎の立ち回りをしてくれと頼まれたんだけど、断ったんですよ。できちゃうといけないから、それが。

三味線のリズムに合わせてやるのが普通の歌舞伎の立ち回りなんだけど、地芝居の方はそれができないんですよ。ただ僕のときは立ち回りがあったんだけどそれにわざとのせなかったのね。はずしてくださいって。僕だけはそれにあわせてバッタリとやったんだけど、地芝居の方たちは自分たちの立ち回りの形でやってくださいってお願いしたんです。その対比をお客さんに楽しんでもらおうと思って。

小田:秦さんも去年は重の井の赤じいをやって、見たこともない役に苦労してたんですよ。僕は大歌舞伎のビデオも持ってるけど、貸さなかったの。

秀調:それは絶対ダメです。大歌舞伎のビデオを見るんじゃなくて、そりゃ地芝居で前やった方がこんなことしてたよ、ってなものでやるのが一番いいんですよ。僕、歌舞伎が乗り込んでいってもいいんですけども、本当にね接点を持ってほしくないんですよ。加子母は加子母の歌舞伎。僕たちは松竹大歌舞伎と呼ばれている歌舞伎。でその差がね絶対せまってほしくないんです。たえずこうあってほしんです。それだけはお願いします。だけども、劇場自体はね、あれ自体大歌舞伎でも十分に使えます。金比羅でも現に芝居をしているのだし。あれだけの設備があるし、楽屋もできてるでしょ。僕たちのときはまだプレハブの楽屋で簡易シャワーでしたよ。

小田:今は裏にすばらしい楽屋ができていますからね。

秀調:僕たちが建てた様なものですよ。(笑)

:僕が加子母に来た時にはもうありましたから、その前は知らないですね。

秀調:トイレも楽屋にはなかったですから設置してよって言って、簡易トイレを3つ付けてもらったんですよ。

だからお風呂は、ようするに民宿へ帰ってからゆっくり入ってください、と車で送ってくださるから、顔したままでも平気だし。

 

小田:その時はどこへ泊まったの。 秀調:民宿です。美佐子さん達は住宅展示場。いいところでした。民宿も立派でしたけどね。 当時はコンビニだってなかったですからちょっと買い物に行くったって車で30分でしょ。でもみなさんとっても協力的だったんですよ。都会に住んでて役者はわがままだから、だいぶ村の方にはご迷惑をおかけしたと思うんですよ。でもソフトボール大会なんかもしましたよ。

:加子母には何日くらい滞在しましたか

秀調:正味の公演は4日くらいあったと思うんですけど、ただ稽古日が長かったから、お客様に見せたりしてましたから。10日以上居たんじゃないでしょうかね、ええ。 それで民宿で夜に外へ出て空を眺めたら、日本にこんな星があったのかと思うくらい。外灯がないから。あのとき初めてわかりました暗闇をこうやって歩くってのを。だんまりであるじゃないですか。

小田:ああ、だんまりであります、あります。

秀調:こうやるの、加子母で初めて経験しました。宿を出て自分の車へ行くまでに、やっぱりそう言う風になりましたね。

小田:加子母には秀調さんのファンも多いし、一つは巡業で回る際にちょっと寄ってもらうように運動するってのもいいかな。

秀調:特に歌舞伎座が平成22年5月から建て替えになりますからね、休みの役者さんを集めてかしも明治座で歌舞伎をするのに、この3年間はチャンスなんですよ。

小田:個人的には秀調さんたちにお暇があったら来て頂いて、加子母の人と話す場みたいなものを…。

秀調:だから、トークショーみたいにね、それはまったくかまいませんよ。

僕ら、2年後くらいにかみさんと泊まりに行ったんですよ。そしたら民宿の方から当時の村長だった粥川さんに連絡が行っちゃって、そうしたら村の人がみんな集まってくれて、飲めや歌えの大騒ぎ。

:そうですか。

秀調:見たこともない色のキノコ食べさせられてね。(笑)ご主人が山へ行って取ってきたってね。いろいろ思い出がありますよ。

小田:いやぁ、たまたま秀調さんの楽屋へ遊びに行った時にその話を聞いて、加子母村なんて聞いた事ないななんてね。

秀調:僕も最初読めなかったもの。これ何村?「かしもむら」って聞いて、そうなんだってそっからのスタートだから。とても楽しかったです。

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中津川市加子母(かしも)は檜(ひのき)と地歌舞伎の郷。かしも明治座は明治27年にできた、木造の芝居小屋。

岐阜県指定有形民俗文化財 かしも明治座

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