田中千香士/木造建築に響く音   2

tanaka
毎年、演奏する曲はどのようにして決めるのですか
それはあの、なるべく同じ曲が重ならないようにとか、それからちゃんとしたシンフォニーをやらなくちゃいけないから、そうするとどうしてもやっぱり大きいベートーベンとかブラームスとか代表的な物をあさってから、もっと枝葉になっていくともっと新しいものもありますけど、ホールなどの大きさに制限がありますから最小限のオーケストラですね。昔のベートーベンやモーツァルト時代のその編成でやってるから、曲目が限られてきてきます。ブラームスなどはベートーベンに憧れているから時代は一〇〇年以上経ってるけどまたもとに戻って、またベートーベンと同じ事をやっている。そういうところがあるから、
そういう人を選んでいかないと演奏できないです。いわゆる、古典になってくるのです。
加子母の子供たちにこういう風に聴いてもらいたいとかっていうのはあるのでしょうか
 
そういう風には全然思ってないの。要するに子どもがいるから子ども用の音楽とか、子どもが喜ぶ音楽とか絶対やらない!そら、そういうことやっている団体もいっぱいありますよ。それはそれで工夫していろんなことやってますけど、その時子どもが喜ぶのはその時知ってる曲がでてきたりとかで、ア〜、キャ〜、で終わりなんです。だけど、そんな事をやってもしょうがない。本当の意味での教育ではやっぱり、これだけのシンフォニーの本気のヤツをね、例えば「運命」にしたってタタタタ〜、タタタタ〜そこだけじゃなくて、ものすごく長い四楽章まであってそれで全部なんだっていうことが解ってもらえるためには、多少子どもたちが退屈だと思っても、やっぱりやってる人が本気でいい音を出していれば、子どもはするどいから、反応というか、影響というか、まじめなものはちゃんとビシッて入ってくるのですよ。別に子どものためにやってるんじゃないですよ。だから、本物を全部磨いてならべてあげる。それが僕が一番大切な事だと思ってます。
tanaka
毎年好評で遠くからも楽しみにして来られる方が大勢いらっしゃいます。
 オーケストラもここへ来るって事自体が、一人一人が喜んで来ているってことですよ。勉強だから来いって言われて来るんじゃなくて、加子母へ行くぞっていう声だけがあって、それに学生が応募してくるんですよ。それがいつも多すぎて断るくらいだから。まあ、来るほうとしても楽しみにしてるんですよ。それをみなさんがそれだけ喜んで下さるっていうのは演奏にも力が入ります。
リハーサルの日に明治座の外で田んぼに向かって練習をされている方がいらっしゃって、その光景がとてものどかで、いい感じだったんです。みなさんも新鮮な気持ちになったりされるのですか
まあそれはね、演出としてはとってもいいんだけど、彼らは田んぼがあるからって癒されて弾いてるかって言うと、全然そうじゃないんです。もうとにかく、楽器を持ったときっていうのは、楽器と自分との勝負だけだから、まわりの雰囲気も何もないんです。ただ第三者が見るとそういうふうに見えるんだけど、本人はそんなこと思ってない。広いところで自由に弾けるってことは喜んでいるでしょうけどね。いい景色で、いい天気で、いい空気を吸ったらいい演奏ができるっていう様なもんじゃないんですよ。全然そんなものは関係ないですよ。そりゃ、やっぱり技術ってのはもっと厳しいものだからそんな雰囲気によって変わるもんじゃないです。だけど、それができるようになったら本当のプロですよ。そのいい景色と自然を表現できるようになったら、大家ですよ。
ここに来ていいのは、東京にいるときはみんなバラバラで、いっしょにやってるわけではないので、それがいっしょにご飯食べたり、寝たりしてると、もっとずっとコミュニケーションがとれて、チームワークが良くなるのはとてもいいことだと思います。

インタビュー1

明治座クラシックコンサート