2021年11月27日に行われた明治座クラシックコンサート特別演奏会に出演した白井圭さんら四名の演奏者を招いて行われたかしも通信200号記念パーティーで普段聞けない色んな話を聞くことができました。
演奏者:白井 圭/上野 由恵/宮川 奈々/市 寛也
かしも通信:原 ゆうみ/秦 雅文/佐藤 洋子/佐野 智哉/福井 やよい
原 バイオリンは何歳からやってるの?
白井 3歳から。幼稚園の園長先生がバイオリンをやっていて幼稚園にバイオリンをやる子がちらほらいたんです。通園バスに乗ってる年長さんが持ってるバイオリンのケースがかっこよくて僕もやりたいって言ったんです。母は昔やらされていたことがあって自分が嫌だったのでやらないほうがいいと言ってたらしいんですけど三歳のお誕生日までやりたい気持ちが変わらなかったらやっていいと言われました。僕はオルゴールが大好きでいっぱい持ってたり、子供番組はセサミストリートくらいしか見なかったのですがそこに出てくるバイオリンはなんとなく聞いていました。で、3歳の誕生日になってもやりたいって言ったんです。そうしたら小学校卒業するまでは辞めちゃダメと約束させられて、やることになりました。中学の頃まではどっちでもいいかなと思ってやっていたけど高校になって初めて室内楽を知って、それまでどっちかと言えばきつくて、そんなに楽しいと思ってバイオリンを弾いたことがなかったけど、こんなに楽しいものがあるんだと知ってそこからはバイオリニストになろうと思ったんです。
上野 高校に入ったときはまだ思ってなかったの?
白井 憧れくらいで本気では思ってなかったかな。普通校に行こうかなと思ってたくらいだから。でも小学校の七夕の短冊には「N響のコンマスになりたい」って書いてた。本当に音楽の楽しさを知ったのは高校に入ってから。だから内声の方が好きなのよ。メロディーなんて興味なくなっちゃうくらい。どれだけ中でいろんな色彩を与えられるかっていうのがすごく楽しくって。
原 バイオリンだとメロディーラインが多いもんね
白井 大学に入ってからは室内楽の山根先生がとてもハーモニーのこととかを言ってくださったからより楽しくなっちゃって、最高ですよ音楽家。ほんとに辞めなくってよかった。
上野 メロディー、リズム、ハーモニーっていうのが音楽の三要素なんです。でも最初ってメロディーばかり勉強するんですよ。でもハーモニーが特に大事なんです。
白井 僕は学生時代に「仕事弾き」というのにネガティブなイメージがあったんだけど、林英哲さんっていう和太鼓のすごい人がいて、「私は一つ一つのステージを与えられた仕事だと思って全身全霊を傾けて取り組んでいます。」ってインタビューで言ってたのを聞いて、仕事って本当はそうだなと思ったんです。自分も最高のものをそこで作るためにやってきたわけだし仕事って全然悪い言葉じゃないんだと思って、それからは仕事って言えるようになりました。学生の時はそう思ってやっていても本当に崇高なイメージを持って仕事をしている人は少ないのが残念です。でも加子母ではそれができるから嬉しいんですよ。だってすごいことだよ40歳近くなって朝9時半から夜10時まで練習してる。昨日だって飲んだ後、練習しに行ったんだよ。
市 練習っていうか、まあ酔っ払ってね
白井 でもあれがあったからよかったんだよ。最後まで引いたのかな?
市 弾いた弾いた。だって全楽章弾いたもん。
白井 それが楽しいんだよ。加子母に来る学生にも、来たらちょっと違うなって思わせたいな。
佐野 建築とかだと元々「普請」という言葉があって、建物を建てるにも昔はお金がなくて、みんなの労働力とか材料を持ち寄って建てたんです。明治座も普請で建てたわけです。でも今は請負なんです。お金を払って専門業者に建ててもらう。でも加子母っていろんなところに普請の名残があるんです。これができるよっていうのを持ち合わせてその人たちがベストをつくすというのがいいなって思うんです。
白井 加子母の人たちでオケやったら最高だな。
佐野 音楽は極めていくイメージがあるんですけど、ずっとやり続けていくっていうのはどういう感じなんですか
白井 なんのジャンルでもそうだけど音楽も元々は原始時代から声出してリズムを叩いてやってたのが楽譜に起こされる様になったのが多分500年前くらいだよね。今我々がやっているクラシック音楽っていうのが300年から400年前くらいに始まったんだけど。
流石に伝統があるから絶対同じことやててもやり切ることはないし、だんだん知ってくるところも多いんです。だからいろんなことやらないでそれだけやっていても何にも退屈しないよね。
上野 やってもやっても追いつかない。多分死ぬまでそうなんだろうな。
白井 作曲家っていうのはすごくて、新しいものをどんどん取り入れて実験をしているわけです。
宮川 モーツァルトもベートーベンも元は現代音楽だったわけだから彼らもその時は実験音楽をしていたわけです。
佐野 それを突き詰めて何か出てくるんですかね
白井 それは誰もわかんない。
上野 もう何もないかもしれない。でも新しいものを目指して作っている曲っていうのはつまらないんですよ。
佐野 新しさだけでも陳腐なという感じですかね
白井 また面白いのはバロックとかそれこそベートーベンやモーツァルトなんかの曲でもアプローチによって現代曲より現代的に聞こえたりするのが面白い。そういう新しい発見が音楽では日常茶飯事にありますよ。
佐藤 演奏している時にはどんなこと考えているんですか
白井 その時弾いてるインプットがすごく大事で周りで起こっている事、そこから自分の中でそれをどっちの方向に行くか線を追ってる感じかな。僕はね。由恵さんは何考えてるの?
上野 曲とか編成によっても全然違いますけど室内楽は運転してるように横見て前見ていろんなとこからの情報を全部入れなきゃいけないです。でもこの曲の何をお客さんに伝えるか、ワッと華やかさを出そうっていうのがあったとしたら、その気持ちを絶対落とさないようにしてます。
白井 弾いてる時もそれを考えてるの
上野 考えてる。その空気感の中にいるような気持ちで。じゃないとやっぱり伝わらないので。
曲によって何をするか温度感とか考えてますね。不器用なので考えて計画立てないとできないタイプです
白井 練習の時は計画を立てて構造を考えたりするけど本番になるとテンションは高くなるからね冷静じゃないもん。間違えることもあるけど、そのテンションを伝えてるのかもね。自然と覚醒しちゃうんだよ。
秦 僕はリハーサルで白井さんと他の演奏者の方とのやりとりをを見てるのが好きなんですよ。
白井 なんか変わるのわかる?
秦 音がどう変わるかまでは僕には聞き分けられないんですけど、さっきと少しイメージが変わったっていうのはわかるんです。どういうところに意識を持ってやってるのかというのに興味があります。
福井 普段はどうしてるんですか
白井 まあ、その時に何やってるかによるけど、例えば加子母の時もそうだし自分が曲全体を把握していないと行けない時は自分のパートだけ練習しててもしょうがないからスコアっていう全部のパートが書いてあるやつで考えてコンセプト立てる時間も必要になったりするし、あとは単純に自分が弾ける様になる練習も必要だし、一緒に合奏するメンバーで集まってやるのも必要です。
かしも通信はリモートで打合せをするそうですが演奏はリモートでは難しいですね。
福井 かしも通信はリモートばっかりですからね。
白井 それでできるのがすごいよ。持ち寄ってやるっていう文化があるのが素晴らしい。200号改めておめでとうございます。
市 1000号目指して頑張ってください。
秦 あと75年かかっちゃいますよ!
提供:かしも通信