2023 原 ゆうみ Hara Yumi/ピアニスト
第23回明治座クラシックコンサートにピアノ演奏で参加する、原ゆうみさんにお話を聞いました。
ピアニスト/ 原 ゆうみ
聞き手/秦 雅文(明治座クラシックコンサート実行委員長)
秦 今回の明治座クラシックコンサートでは マーラーの交響曲第1番「巨人」を演奏す ることが決まり、ピアノが必要ということで 原さんにお願いすることになったのですが、 明治座クラシックコンサートにピアノが登場 するのは初めてです。2017年にチェンバ ロ演奏で上区の渡辺敏晴さんが参加したこ とがありますが、それ以来の加子母在住者 の参加です。出演が決まった感想を聞かせ てもらえますか。
原 マーラーの交響曲と言えば、大編成の 弦楽器・金管楽器・打楽器が繰り広げる壮 大でドラマティックな響きのイメージがあり ます。 今回演奏する交響曲は五十五分ですけ ど、それでも演奏時間が比較的短いくら いです。第三楽章には聞き覚えがあるメロ ディーが出てきます。このメロディーはドイ ツの童謡「フレール・ジャック」をもとに作ら れていて、日本でも「グーチョキパーで、グー チョキパーで、何つくろう~」の歌でおなじ みですね。なじみやすく自然の情景を感じ させる曲です。 今回は私もオケに乗ることになりました が、聴くのを楽しみにしていたので、正直な ところ聴くがわに回りたかったですね。 でも、レボアンの皆さんと一緒に音を出し て、音楽を一緒に作れるということは嬉しい ことなので、打診が来た時には即決してし まっていました。オーケストラの中で弾くと いうのは久しぶりなので楽しもうと思いま す。
秦 今まで演奏に加わってみたいと思ったこ とはあったのですか?
原 いつも聴くことが楽しみだったので、な いですね。 演奏する側に立って考えると、明治座で 弾くというのは心構えがすごく重要なんで す。反響がなく自分の音が跳ね返ってこな いので、自分の気持ちで音を出してそれを 頼りにするしかないのです。 普通のコンサートホールの方が断然弾き やすいと思います。 ホールの響きに頼れないので聞いてる人に届 いてるかどうかもわからない。だからあそこ の空間というのは演奏者の気持ちとお客さ んに力をもらうことで音楽が出来上がって る感じがします。
秦 明治座での演奏より他のコンサートホー ルでの演奏の方が音は確かに綺麗に聞こえ ますけど、例えるとCDを聞いてるのに近 い感じがします。それに比べて明治座で聴 く音は、もっと生の音を聞いてるような感 じが強いです。 白井圭さんも、ホールによって響きは違っ ていて、あまり好きじゃないホールっていうの もあると言っていました。もっと響かないと ころで弾くこともあるし、決して明治座の 響きは嫌いではないとも言っていました。
原 クラシックは、乾燥した空気と石の建 物などの響く空間で生まれているのに対し、 日本の音楽は湿気と木の建物で生まれた 音楽で、残響というより一瞬の息の込め方が ポイントになる気がします。
秦 オーケストラにピアノが入ることって少 ないんじゃないですか 原 交響曲にピアノが入るっていうのは少 ないです。もともと弦楽器・管楽器・打楽器 で作るのがオーケストラなのです。 ピアノは同時にたくさんの音が出せるので、 指揮教室などではピアノがオーケストラの 音を弾いて指揮の練習に付き合います。 それくらいピアノだけでオーケストラの和音 の響きを表現できるのです。 今回演奏するこの曲も、本来はもっと大 勢で演奏することが多くピアノも入りませ ん。今回は二十五人だけで演奏するにあたっ て、足りない音をピアノを加えることでカバー するんだと思うのです。まだ楽譜を見てな いのでなんとも言えないのですけど、そう 理解しています。 今回はアコーディオンも加わるそうなので、 それも面白いですね。アコーディオンも足り ない音をカバーするために入るんじゃないか と思うのです。アコーディオンがどういう音 色をカバーするのか楽しみです。
秦 音楽監督の白井さんは若い頃からここ へ来て音楽を作ってきて、加子母を「音楽 的心の故郷」とまで言っています。 白井圭さんをはじめとしたレボアン(レボ リューション・アンサンブル)の皆さんが、どう してこんな山の中まで来て演奏会をやるか といえば、彼らの自分たちの音楽を創たい という気持ちを、加子母の空気や、美味し い食べ物や、演奏会を一緒に創りたいという 地元の人たちの思いが後押ししてこれまで 続いてきたわけです。 それぞれのやりたい気持ちが合わさり、パ ワーが増強され、ここでしか体験すること ができない演奏会の魅力を作り出している のだと思います。 レボアンのメンバーが流動的であるように 地元もいろんな人の協力によって更に続いて いくことが望ましいと思っています。 原さんの演奏が加わる今回の演奏会が 今から楽しみです。
提供:かしも通信