明治座の屋根が本来の様子に葺き直された。
瓦だった大屋根が栗やサワラの木の板に戻されたという。
初めて明治座を訪れたのは、改修後初の地歌舞伎公演本番前日。
田んぼの向こうに見える建物は得も言われぬたたずまいがある。入り口付近には歌舞伎小屋独特の賑わいが上品に演出されていた。今回の工事で新しくなった部材が見事に組み合わされ、120年以上ここに培われてきたかかわりの様が認められた。
舞台では気合いの入った稽古の真っ最中。さながら本番同様の緊張感と熱気に包まれていた。
一階の平場を仕切るように回らされる歩みが印象的に目に入る。出番を控えた役者たちが腰掛けて打ち合わせたり舞台を見上げたりしている。両側に用意された花道も空間を一層豪華に見せていた。これを囲むように配された二階席を含め、舞台への視界を遮る余計な柱や壁などを一切使わずに大空間を保つために渡されているという太い梁には大いに迫力を感じた。単に歴史的建造物として保持するのではなく、人々が集まって歌舞くことで共震し実現される現場の心地良さが感じられた。
なるほど屋根を軽くして行われた耐震工事とは、そうした意図であったのだ。
この数十年、日常当たり前だったかかわり合いが大きく変化している。加子母には、木とかかわり培ってきた時間がある。
今、ここでそんな間合いを感じつつ制作してみたい。