大橋可也&ダンサーズ『沈黙』
出演:山本晴歌、伊藤雅子
音楽:舩橋陽
振付:大橋可也

はぐれてしまった身体に出会うこと、それは土方巽ら、舞踏の創始者にとって重要なテーマであった。ひらたくいえば、舞踏が生れた高度成長期、大量生産、大量消費の時代にあって、自らの身体をベルトコンベアーのなかに見失ってしまうことは、日常そのものであり、だからこそ、その身体に出会おうとすることこそが、舞踏家の存在意義であったのであろう。しかし、今はどうだ。僕たちはSNSやらで、僕たちが誰であるか、どこにいるか、日々教えられ続けている。自撮りだって、いつものルーティン。僕たちの身体は常にあきらかであるはず、だ。もう、舞踏にも、身体表現というものに意味はないのかもしれない。そのことを確かめるためにも、僕たちは再び、はぐれてしまわなければいけないのではないか。意図してはぐれてみよう。僕たちを取り巻くシステムに名付けられた身体から。それを僕たちの日常から遠く離れた明治座で試してみたい。

今回が大橋可也にとって17年ぶりの加子母でのパフォーマンスとなる。あのときのワークショップに参加してくれた子供たちは、もう成人しているだろうか。彼らと再会できることを楽しみにしています。