身のまわりで見つける取るに足りない不用物を拾うなど、日常の行動の中でふと見つけたものや出来事を起点に制作をしています。

明治座での展示は、加子母の町内で見つけたほうきのスナップ写真を中心に構成されました。
街で見かけるほうきを追いかけ始めたのは、2013~14年に滞在制作をしていたタイでのことでした。東南アジアの路上はさぞかし色々なものが落ちているだろう。と見積もり、タイに渡って2ヶ月目、路上や街の様子をぶらぶら見て歩くにつれ、人々が掃除をする様子を頻繁に目にしていることに気づき始めました。街のあちこちに置かれたほうきや塵取りの様子にも関心が移り、観察を始めました。

そんなある日、アパートの部屋の隅を掃除しながら、ふと「小ぼうきが要るな、、」と思い立ちました。というのも、タイの一般的なほうきの例に漏れず、私の使っていたそれは、毛のコシの無い、毛先に向かって外側に扇の如く開いた形状の物で、隅をきれいにするには何ともすっきりしない掃き心地なのでした。近くの商店に行くと、私の思い描く小ぼうきは見当たらず、代わりにペイント用の刷毛が目に留まりました。私はそれを買い、再び部屋の隅を掃除しながら、”ほうきとしての絵筆”、”絵筆としてのほうき”について想像を巡らし始めました。

今回の加子母での活動は、これらの出来事の延長線上にあります。