2009 坂東 秀調/歌舞伎役者

「酔ざめお園」プレビュー公演から13年、明治座を憶う

かしも明治座で平成8年に行われた渡辺美佐子・坂東秀調の「酔ざめお園」プレビュー公演に出演された秀調さんにお話を聞こうと、小田孝治さんを案内人に、歌舞伎座さよなら公演[五月大歌舞伎]の初日の楽屋へおじゃましました。

案内人:小田孝治さん(歌舞伎評論家)

インタビュー:秦雅文(かしも通信編集長)

秦:僕は加子母で地歌舞伎を始めて11年 になりますが、秀調さんから見た、加子母 の地歌舞伎の魅力ってどんなとこですか。

秀調:村の方々が座布団を持ったり、水筒 を手にして楽しみに明治座へ向かう姿を 見て、これが歌舞伎の原点だと思いまし た。加子母の地芝居は地芝居でかっちり 残してもらいたい。 だから、僕が伺った時に、歌舞伎の立ち回 りをしてくれと頼まれたんだけど、断ったん ですよ。できちゃうといけないから、それが。 三味線のリズムに合わせてやるのが普通 の歌舞伎の立ち回りなんだけど、地芝居の 方はそれができないんですよ。ただ僕のと きは立ち回りがあったんだけどそれにわざ とのせなかったのね。はずしてくださいっ て。僕だけはそれにあわせてバッタリとやっ たんだけど、地芝居の方たちは自分たちの 立ち回りの形でやってくださいってお願い したんです。その対比をお客さんに楽しん でもらおうと思って。

小田:秦さんも去年は重の井の赤じいを やって、見たこともない役に苦労してたん ですよ。僕は大歌舞伎のビデオも持ってる けど、貸さなかったの。

秀調:それは絶対ダメです。大歌舞伎のビ デオを見るんじゃなくて、そりゃ地芝居で前 やった方がこんなことしてたよ、ってなもの でやるのが一番いいんですよ。僕、歌舞伎 が乗り込んでいってもいいんですけども、 本当にね接点を持ってほしくないんですよ。 加子母は加子母の歌舞伎。僕たちは松竹大 歌舞伎と呼ばれている歌舞伎。でその差が ね絶対せまってほしくないんです。たえずこう あってほしんです。それだけはお願いします。 だけども、劇場自体はね、あれ自体大歌舞伎 でも十分に使えます。金比羅でも現に芝居 をしているのだし。あれだけの設備があるし、 楽屋もできてるでしょ。僕たちのときはまだ プレハブの楽屋で簡易シャワーでしたよ。

小田:今は裏にすばらしい楽屋ができてい ますからね。

秀調:僕たちが建てた様なものですよ。(笑)

秦:僕が加子母に来た時にはもうありまし たから、その前は知らないですね。

秀調:トイレも楽屋にはなかったですから設 置してよって言って、簡易トイレを3つ付けて もらったんですよ。 だからお風呂は、ようするに民宿へ帰ってか らゆっくり入ってください、と車で送ってくだ さるから、顔したままでも平気だし。

小田:その時はどこへ泊まったの。

秀調:民宿です。美佐子さん達は住宅展示 場。いいところでした。民宿も立派でしたけ どね。当時はコンビニだってなかったですからちょっと買い物に行くったって車で30分でしょ。でもみなさんとっても協力的だったんですよ。都会に住んでて役者はわがままだから、だいぶ村の方にはご迷惑をおかけしたと思うんですよ。でもソフトボール大会なんかもしましたよ。

秦:加子母には何日くらい滞在しましたか

秀調:正味の公演は4日くらいあったと思う んですけど、ただ稽古日が長かったから、お 客様に見せたりしてましたから。10日以上 居たんじゃないでしょうかね、ええ。 それで民宿で夜に外へ出て空を眺めたら、 日本にこんな星があったのかと思うくらい。 外灯がないから。あのとき初めてわかりまし た暗闇をこうやって歩くってのを。だんまり であるじゃないですか。

小田:ああ、だんまりであります、あります。

秀調:こうやるの、加子母で初めて経験しま した。宿を出て自分の車へ行くまでに、やっ ぱりそう言う風になりましたね。

小田:加子母には秀調さんのファンも多い し、一つは巡業で回る際にちょっと寄って もらうように運動するってのもいいかな。

秀調:特に歌舞伎座が平成22年5月から 建て替えになりますからね、休みの役者さ んを集めてかしも明治座で歌舞伎をするの に、この3年間はチャンスなんですよ。

小田:個人的には秀調さんたちにお暇が あったら来て頂いて、加子母の人と話す 場みたいなものを…。

秀調:だから、トークショーみたいにね、そ れはまったくかまいませんよ。 僕ら、2年後くらいにかみさんと泊まりに 行ったんですよ。そしたら民宿の方から当 時の村長だった粥川さんに連絡が行っ ちゃって、そうしたら村の人がみんな集 まってくれて、飲めや歌えの大騒ぎ。

秦:そうですか。

秀調:見たこともない色のキノコ食べさせられてね。(笑)ご主人が山へ行って取ってきたってね。いろいろ思い出がありますよ。

小田:いやぁ、たまたま秀調さんの楽屋 へ遊びに行った時にその話を聞いて、加 子母村なんて聞いた事ないななんてね。

秀調:僕も最初読めなかったもの。これ何 村?「かしもむら」って聞いて、そうなん だってそっからのスタートだから。とても 楽しかったです。